研究紹介
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アドバイザリーボードメンバー紹介

大阪大学大学院薬学研究科薬品製造化学分野 教授 赤井 周司

大阪大学薬学研究科 赤井周司
産でも官でも学でもない研究所に博士課程修了者や留学帰国者が集い、議論し、切磋琢磨した。その後、大学等に職を得て、今では教授となって大活躍している人が沢山居る。かつて、我が国にそのような登竜門があったが、その後、諸事情で殆どが閉所される中、100余年の歴史を誇る乙卯研究所が、新たな地で再出発したことは極めて意義深い。若手研究者に自由な研究の場と機会を与える点で、我が国に於いて稀有な存在である。また、4名のアドバイザリーボードは有機化学を専門とする現役の大学教授であるが、それぞれの得意領域が異なることが特徴である。個々の研究員の研究状況に応じて、適宜相談に乗っている。

自ら生み出したアイデアを、自分の手で実行し、それを実現する。何の束縛もない。自分の思い通りに研究に没頭することができる。これほど楽しいことはない。この恵まれた環境を充分に活用し、焦らずにじっくりと取り組んでほしい。また、周りの同胞と熱い議論を交わして純粋に化学研究を謳歌して頂きたい。

若い時に、このような時間を持つことは大変贅沢であり、かつ、この時期しかできない。この地で力を蓄え、次のステップに躍り出る覇気のある若者を大歓迎します。

東京大学大学院薬学系研究科薬化学教室 教授 大和田 智彦

東京大学大学院薬学系研究科薬化学教室 教授 大和田 智彦
新生「乙卯研究所」は、最近博士の学位を取った若い人材の能力をインキュベートするという崇高な理念を持った研究所です。

このような場は日本ではほとんど皆無に近いと言ってよいでしょう。将来アカデミックに行く、海外に留学する、企業に就職するにしても、いずれも化学のエキスパートとして生きていくしかありません。
昨今の日本の産業界の様子を見れば分かるとおり、絶対的に安定な道などもはや存在しないと思います。30年ばかり学会の様子を眺めていますが、研究には流行があって、多くは5年-6年くらいしか続きません。その流行の中に身を置くことは良いのですが、10年、15年経つと自分はいったい何を研究してきたのだろうと忸怩たる思いになります。そうならないためにも流行に身を置く必要はなく、じっくりと自分の頭で考え、自ら手を動かして研究を探求していくことは学位を取った後にこそ重要です。

そのような若い人材が集まり、育つことを願っており、また若い人から学べることを楽しみにしています。

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研究顧問

千田 憲孝

千田 憲孝(慶應義塾大学 名誉教授)

2023年4月より只野金一先生の後任として研究顧問に就任いたしました。慶應義塾大学理工学部在職時は約35年にわたり天然有機化合物の全合成研究に従事してきました。慶大を定年退職後、公益財団法人乙卯研究所において若い研究員の諸君と有機化学の深い議論ができる機会を再び得ることができ、刺激的な日々を過ごしています。

ここ乙卯研究所では、将来世界の有機合成化学をリードする若手研究者を育成すべく、最新の設備を用意し、一流のアドバイザリーボードの先生方にも参画していただいています。研究者自身のアイディアによる独創性豊かな基礎研究が展開できる態勢が整っている研究所と言えるでしょう。アドバイザリーボードの先生方とのディスカッション、また研究員同士の切磋琢磨は、研究をより深化させます。

このような魅力を持つ乙卯研究所は、意欲と熱意溢れる若手研究者の積極的な参加をお待ちしています。

研究員紹介

田中 耕作三世

田中 耕作三世

乙卯研究所は、研究員自身の『考え』を形にできる環境が整った施設です。その中で研究顧問及びアドバイザリーボードの先生方と、その『考え』をさらに磨き上げることで『自身の研究』へと昇華できる素晴らしい環境だと思います。
『自身の研究』を干渉されず実施したい、形にしたいと考えている若手研究者にとってこれ以上ない場所だと思います。

柴田 真太郎

柴田 真太郎

本研究所は、若手研究者を育成するために研究所全体で支援していただける研究施設です。
研究員は単なる博士号を取得した際の研究の継続ではなく、独自の発想と方針で研究テーマを各々が定め、意欲的に取り組むことができます。“やらされている研究”から“自らの意思・テーマでやる研究”をしたい人には最適の環境です。
一方で、自身の研究テーマに対する化学的な意義やその研究に対する課題などは、ひとりで研究をしていると思考が偏り、煮詰まってしまうことが多いと思います。しかし、その点で本研究所はアドバイザリーボードの先生方ならびに研究顧問の先生や、隣で自分とは全く違う研究を展開している熱意ある研究員と気兼ねなくディスカッションができ、柔軟な思考で研究の発想を練れることも大きな魅力です。

中村 皓毅

中村 皓毅

乙卯研究所は、研究者自らが立案した研究テーマに挑戦することができる恵まれた環境です。また、研究顧問およびアドバイザリーボードの先生方とのディスカッションを経て、研究をさらに深めることが可能です。
研究所で意欲的に活動を行うことで、研究者として大きく成長できると思います。

松浦 良史

松浦 良史

乙卯研究所は、研究者が独自に考えたテーマを独立して遂行・発展させることができる場所です。他分野を研究している研究者と議論して視野を広げることも、アドバイザーの先生方と議論してテーマに深みを出すこともできます。設備に関しても、有機合成実験に必要な実験器具や精製装置、解析装置が一通りそろっており、大学の研究室と遜色ない環境で自由に研究できる環境が整えられています。
博士研究とは異なり、一から研究テーマを考案し、議論と実験を重ねて発展させていく一連の経験の中で、本当の意味で自立した研究者へ成長するための貴重な時間を過ごすことができます。



寄稿文

中部大学 分子性触媒研究センター長 教授 山本 尚

研究報告会

研究報告会

乙卯研究所では、原則、3ヵ月に1回、各研究員が自分の研究進捗をプレゼンする研究報告会を開催しています。アドバイザリーボード委員全員の先生方が参加されますので、活発なディスカションが行われるとともに新たな課題も設定されます。各研究員は次回までにその課題の解決に向けてさらに研究を進めることで大きなステップアップを着実なものにします。

当研究所出身者の転出先

岐阜薬科大学(助教)、十全化学、三菱ケミカル株式会社、大阪大学(特任助教)、高崎健康福祉大(助教)、東北大学(助教)、岐阜大学(助教)、東北大学(講師)、広島大学(助教)、明治薬科大学(助教)、京都大学(特定助教)、Pennsylvania大学(研究員)、東京理科大学(助教)、株式会社PRISM BioLab、Red Arrow Therapeutics株式会社など

研究紹介

設備

  • グローブボックス(DRU600TC)
    グローブボックス(TG-800)
  • 分取装置(EPCLC W-Prep 2XY, Yamazen)4台
    分取装置(EPCLC W-Prep 2XY, Yamazen)4台
  • クーゲルロール(SIBATA)
    クーゲルロール(SIBATA)
  • 脱水溶媒装置(UltimateSloventSystem3S, NIKKO HANSEN)
    脱水溶媒装置(UltimateSloventSystem3S, NIKKO HANSEN)
  • NMR装置(JEOL, 400MH)
    NMR装置(JEOL, 400MH)
  • LC-MS(ExactivePlus,Thermo Fisher)
    LC-MS(ExactivePlus,Thermo Fisher)
  • 赤外分光光度計および旋光計(FT/IR-4600 and P-2200, JASCO)
    赤外分光光度計および旋光計(FT/IR-4600 and P-2200, JASCO)
  • LC-UV(JASCO)
    LC-UV(JASCO)
  • 凍結乾燥機(FDU-2200, EYELA)
    凍結乾燥機(FDU-2200, EYELA)
  • Multiple Preparative HPLC(LC-Forte/R, YMC)
    Multiple Preparative HPLC(LC-Forte/R, YMC)

研究費獲得状況

2023年3月現在、以下、1件の研究費を獲得しています。
  • 田中 耕作三世 研究員
    研究種目:2021年度 若手研究
    研究課題:「オキシムの特性を基盤とした遷移金属触媒を用いた多様化への展開」

全合成化合物構造式集(PDF)

乙卯研究所 全合成有機化合物 構造式集
Structure Formula List of the Natural Products Totally Synthesized in ITSUU Laboratory (1968 - 2004)

乙卯研究所は大正 4 年 (1915 年) 6 月 10 日 芝区 葦手町に設立されて以来、大正 6 年 (1917 年) には赤坂区 青山南町、昭和 9 年 (1934 年) には渋谷区 金王町へ移転しました。この間昭和 13 年 (1938 年) には財団法人としての認可を受けました。さらに現在の世田谷区 玉川に移転した昭和 41 年 (1966 年) は、創立 51 年目にあたります。この時期は有機化学の分野においても新しい潮流が見られた時代です。天然物化学の分野において、それまでは天然有機化合物の構造決定が研究の中心でしたが、これに加え、これらを全合成しようとする試みが世界中で本格化した時代にあたります。

乙卯研究所には「芳香族異項環塩基の薬学的研究」という大きな研究の流れ (テーマ) があります。これはピリジン、イソキノリン、インドール等の含窒素芳香族化合物を素材として、新規な反応を開拓し、これを天然物や生理活性物質の合成などに応用利用しようとするものです。事実、乙卯研究所では、まず i) 独自の反応を見出し、ii) これを活用して天然物を全合成し、その有用性を実証する、という研究スタイルを貫いてきました。

この構造式集では、1968 年から 2004 年までの間に、乙卯研究所で全合成された天然有機化合物の構造式を過去にさかのぼる形で一覧表示しました。
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