
自ら生み出したアイデアを、自分の手で実行し、それを実現する。何の束縛もない。自分の思い通りに研究に没頭することができる。これほど楽しいことはない。この恵まれた環境を充分に活用し、焦らずにじっくりと取り組んでほしい。また、周りの同胞と熱い議論を交わして純粋に化学研究を謳歌して頂きたい。
若い時に、このような時間を持つことは大変贅沢であり、かつ、この時期しかできない。この地で力を蓄え、次のステップに躍り出る覇気のある若者を大歓迎します。
このような場は日本ではほとんど皆無に近いと言ってよいでしょう。将来アカデミックに行く、海外に留学する、企業に就職するにしても、いずれも化学のエキスパートとして生きていくしかありません。
昨今の日本の産業界の様子を見れば分かるとおり、絶対的に安定な道などもはや存在しないと思います。30年ばかり学会の様子を眺めていますが、研究には流行があって、多くは5年-6年くらいしか続きません。その流行の中に身を置くことは良いのですが、10年、15年経つと自分はいったい何を研究してきたのだろうと忸怩たる思いになります。そうならないためにも流行に身を置く必要はなく、じっくりと自分の頭で考え、自ら手を動かして研究を探求していくことは学位を取った後にこそ重要です。
そのような若い人材が集まり、育つことを願っており、また若い人から学べることを楽しみにしています。
2023年4月より只野金一先生の後任として研究顧問に就任いたしました。慶應義塾大学理工学部在職時は約35年にわたり天然有機化合物の全合成研究に従事してきました。慶大を定年退職後、公益財団法人乙卯研究所において若い研究員の諸君と有機化学の深い議論ができる機会を再び得ることができ、刺激的な日々を過ごしています。
ここ乙卯研究所では、将来世界の有機合成化学をリードする若手研究者を育成すべく、最新の設備を用意し、一流のアドバイザリーボードの先生方にも参画していただいています。研究者自身のアイディアによる独創性豊かな基礎研究が展開できる態勢が整っている研究所と言えるでしょう。アドバイザリーボードの先生方とのディスカッション、また研究員同士の切磋琢磨は、研究をより深化させます。
このような魅力を持つ乙卯研究所は、意欲と熱意溢れる若手研究者の積極的な参加をお待ちしています。
乙卯研究所は、研究員自身の『考え』を形にできる環境が整った施設です。その中で研究顧問及びアドバイザリーボードの先生方と、その『考え』をさらに磨き上げることで『自身の研究』へと昇華できる素晴らしい環境だと思います。
『自身の研究』を干渉されず実施したい、形にしたいと考えている若手研究者にとってこれ以上ない場所だと思います。
本研究所は、若手研究者を育成するために研究所全体で支援していただける研究施設です。
研究員は単なる博士号を取得した際の研究の継続ではなく、独自の発想と方針で研究テーマを各々が定め、意欲的に取り組むことができます。“やらされている研究”から“自らの意思・テーマでやる研究”をしたい人には最適の環境です。
一方で、自身の研究テーマに対する化学的な意義やその研究に対する課題などは、ひとりで研究をしていると思考が偏り、煮詰まってしまうことが多いと思います。しかし、その点で本研究所はアドバイザリーボードの先生方ならびに研究顧問の先生や、隣で自分とは全く違う研究を展開している熱意ある研究員と気兼ねなくディスカッションができ、柔軟な思考で研究の発想を練れることも大きな魅力です。
乙卯研究所は、研究者自らが立案した研究テーマに挑戦することができる恵まれた環境です。また、研究顧問およびアドバイザリーボードの先生方とのディスカッションを経て、研究をさらに深めることが可能です。
研究所で意欲的に活動を行うことで、研究者として大きく成長できると思います。
中部大学 分子性触媒研究センター長 教授 山本 尚
岐阜薬科大学(助教)、十全化学、三菱ケミカル株式会社、大阪大学(特任助教)、高崎健康福祉大(助教)、東北大学(助教)、岐阜大学(助教)、東北大学(講師)、広島大学(助教)、明治薬科大学(助教)、京都大学(特定助教)、Pennsylvania大学(研究員)、東京理科大学(助教)、株式会社PRISM BioLab、Red Arrow Therapeutics株式会社など