2025年12月5日に開催された「日本プロセス化学会2025ウインターシンポジウム」にて高橋 一光研究員のJSPC優秀賞(日本プロセス化学会2025サマーシンポジウム)の受賞式が行われ、賞状を授与されました。
概要
公益財団法人乙卯研究所の柴田真太郎研究員と東京農業大学生命科学部の尾中篤教授の研究グループは、従来の手法では合成が難しく十分に利用されてこなかった「窒素上無保護ケチミン(N–Hケチミン)」の新しい合成法を開発しました。この手法は、N–Hケチミンを簡便・安価・低環境負荷で合成でき、さらに大量合成にも適している点が特長です。
柴田研究員は、無機固体酸触媒(粉末状の酸性物質)とヘキサメチルジシラザン(HMDS)を組み合わせることで、従来困難であった多様なケトンから、カラム精製のような煩雑な操作を一切伴わず、濾過・濃縮のみで高純度N–Hケチミンを取得できることを実証しました。さらに、得られたN–Hケチミンを同一の容器内でそのまま反応させることで、窒素上保護ケチミン(N–Rケチミン)、α-アミノニトリル、ヒダントイン化合物など、医薬・材料分野で重要な誘導体へワンポットで効率的に変換できることも見出しました。
本研究は、「使いたくても簡単に使えなかった」有用中間体であるN–Hケチミンの取り扱いを大幅に容易にし、多様な分野での応用を可能にする合成基盤となり得るものです。また、グリーンケミストリーに基づくサステナブルな合成プロセスの構築や、有機材料開発の進展、新規触媒設計、医薬品合成法の革新にも貢献することが期待されます。
本研究成果は国際学術誌Nature Communicationsに掲載されています。
概要
公益財団法人 乙卯研究所の田中 耕作三世研究員は、パラジウム触媒が反応できる基質の適用拡大に成功しました。
パラジウム触媒はその有用性により、創薬の現場などで利用される信頼性の高い触媒です。しかし、反応する際は、反応性の高い脱離基を起点とすることが基本であり、それが得られる生成物の幅を狭めていました。
田中研究員はパラジウムに対して光照射することで生じる「光励起パラジウム種」が有する反応性の高さに着目し、従来パラジウム触媒が反応しないとされてきたケトンと反応し、反応活性種である「ケチルラジカル」の生成に成功しました。生じたケチルラジカルはオレフィンとの反応を経由し、パラジウム触媒特有の反応に展開が可能です。このパラジウム触媒特有の反応は、途中で生じるラジカルの級数によって、還元的カップリング生成物もしくはHeckタイプのカップリング生成物へと変化する結果が得られています。
また詳細な反応機構解析により、従来のケチルラジカル発生法とは異なる性質を有することも明らかにしました。
本研究成果は2024年3月25日公開のACS catalysis誌にオンライン掲載されました。