


今から100年ほど前の1915年(大正4年)に、当時の東京帝国大学薬学科の近藤平三郎先生が、塩野製薬所(塩野義製薬の前身)の二代目塩野義三郎から顧問として依頼された研究を行うための施設を現在の東京都港区芝につくったというのが乙卯研究所の始まりです。
1938年(昭和13年)に財団法人になり、戦中、戦後と薬学研究を続け、1966年(昭和41年)に世田谷区玉川に移転した頃は天然有機化合物の全合成を通じて薬学や有機化学分野に貢献してきました。
その後、ここ20年余りは創薬を目指して研究を進めてまいりましたが、創薬に必要な研究期間に長時間を要し、開発費用も増大してきました。そこで2012年(平成24年)に公益財団法人に移行したころから、理事、評議員、有識者の方々に相談しながら今後の研究所のあり方を考えてまいりました。近年、多くの財団が自主研究をやめて研究助成財団に変更していく中、我が国の有機化学のレベルをより高めることで薬学の分野に貢献するためには、ウエットラボの継続が必要であるという結論に達しました。そこで2015年(平成27年)に創立100周年を機に、ロケーションも新たにかながわサイエンスパークに移り、現在の研究所として船出いたしました。
アドバイザリーボードの先生方をはじめ、多くの先生方のご指導とご鞭撻、そして温かいご支援を賜りながら、1人でも多くの若い研究者に新しい発想で3年、5年と研鑽を積んでもらいたいと思います。そうすることで日本の有機化学を基礎とする薬学の進歩発展に貢献していきたいと考えております。
SDGs(持続可能な開発目標)に代表される「持続可能な社会」を目指すために、現代社会が直面している資源枯渇・人口爆発・気候変動・環境問題等の諸課題の克服がグローバル規模で求められています。これら課題を克服するためには革新的な科学技術の開発が求められ、有機化学はその基礎となる最も重要な研究領域の一つであることに疑いの余地はありません。乙卯研究所は創設以来、有機化学を基盤とした創薬研究に取り組んでまいりましたが、現在では基礎有機化学を中心とした研究を通して、若手研究者を育成することにより薬学の進歩発達に資することを目的とした公益財団法人として活動しています。
「持続可能な社会」の実現に有機化学が担う役割は重要であり、明日の有機化学を支える若手研究者の育成は社会的に意義のある活動と確信しています。一人でも多くの優秀な若手研究者に、大切な時間を浪費することなく、一日も早く一流の有機化学者・研究者となってグローバル社会に貢献してもらいたい。そのために自ら研究テーマを設定し、実験による仮説検証に基づいて成果を公表し、自身の仕事に対する外部からの評価を受けることが研究者としての成長には必須です。それを実践できる良質な環境を提供していくことが、乙卯研究所の使命であり、存在価値であると考えています。
| 代表理事(理事長) | 塩野 元三 |
| 代表理事(所長) | 武内 好行 |
| 理事 |
井上 将行 久保 孝史 中込 まどか 依光 英樹 |
|
尾尻 哲洋 岡本 旦 |
|
赤井 周司 大和田 智彦 川端 猛夫 北 泰行 武田 禮二 千田 憲孝 手代木 功 |
| 荒井 緑 | 慶應義塾大学理工学部生命情報学科 ケミカルバイオロジー研究室 教授 |
| 井上 将行 | 東京大学大学院薬学系研究科天然物合成化学教室 教授 |
| 掛谷 秀昭 | 京都大学大学院薬学研究科 システムケモセラピー制御分子学分野 教授 |
| 高須 清誠 | 京都大学大学院薬学研究科 薬品合成化学分野 教授 |
| 寺尾 潤 | 東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻 教授 |
若手研究者の研究活動を支援することにより薬学の進歩発展に寄与し、広く社会に貢献できる公益財団法人を目標に、財団運営に努力しています。
